今回参加した会議は「国際がんサポーティブケア学会」
(Multinational Association of Supportive Care in Cancer)
ですから、がんの治療そのものではなく、「治療に付随する
さまざまな問題をいかに解決するか」が議論の中心でした。
そのなかで大きな位置を占めるのは副作用対策です。
吐き気・嘔吐/末梢神経障害(ニューロパチー)/
認知機能低下(いわゆるケモ・ブレイン)/倦怠感/
悪液質対策については大セッション(1.5~2時間)が
割当てられ活発な討議がなされました。
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吐き気・嘔吐対策が活発に論じられたことは、激しい吐き気
に苦しんだ者としてはありがたく感じました。また、少し
意外でもありました。というのも・・・私が発症した6年前は
イメンドが普及した頃で、臨床現場では「吐き気の問題は
ほぼ克服された」という雰囲気が広がっていたからです。
しかし、その後「オランザピン」が制吐剤として各国で広く
認められたため、本学会では盛んに抗がん剤との相性(?)
や他の制吐剤とのより良い組み合わせが論じられていました。
「もし、またケモを受けるような事態になったとしても
次の一手が出てきたのかな?」と希望を持ちました。
ちょっと気の毒だったのは、セルビアの現状報告。
北米やEU諸国の医療者が盛んにオランザピンの使用を
前提にレジメンについて報告しているというのに
「まだ国の承認がおりていない。当然保険適用にも
ならない。よって経済的な理由もあり大半の人は使えない。」
どの国に生まれるかで受けられる治療が大きく違うというのは
頭では理解していますが、<具体例で>生々しく示されると
なんとも複雑な気持ちでした。
私も、まだオランザピンは使用しませんでしたが、
周囲も同じ状況だったので仕方ありませんでした。
しかし、周囲が使っているのに自分の国では使えないと
なると・・・私なら理不尽に大騒ぎするかも?
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ポスターセッションでは、ハーブの効用も提唱されていました。
「吐き気には生姜が効く」なんてピンポイントの発表も ^^ !
生姜なら素人でも実行できそうですが、具体的な使用方法
(パウダーか絞り汁か?)は聞きそびれました。←ダメねぇ~
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日本ではあまり取上げられない(ように思える)倦怠感
も大々的に取上げられていました。
倦怠感というのは掴みどころがなく、原因が血液の状態の悪さ
か、食欲不振か、ただの加齢か、はっきりしないように感じます。
程度にしても、動けないほどか、一応動けるけど重いのか、
何となくスッキリしないかの三階くらいしか表現できず
「辛いけど対策を求めにくい」と感じていました。
でも、各国の医療者は真剣に対策を考えてくれているし、
ダルさ軽減の方法もいろいろあるようでした・・・
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悪液質については、同じホテルに泊まっていらした京都の
看護師さんがポスターセッションで発表なさいました。
また、静岡がんセンターの先生には、高齢者の終末期の悪液質
への対処のエッセンスを教えていただきました。
その後、先生は、大セッションにて発表なさったのですが、
「直接お話した方が世界中の研究者を前に発表している、
しかも自分はそのエッセンスを知っている」というのは、
ちょっと心をくすぐりました。
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あちこちのセッションを渡り歩きながら、
「サポーティブケアというのは、がんの治療を妨げられない
という難しさがある。けれども、良いサポーティブケアが
受けられないと、がんの治療も完遂できないおそれがある」
という非常に難しく微妙な関係にあるのだと思いました。
しかし、その難しい“匙加減”を世界中の研究者がいろいろ
考えて、あたらしい薬剤やあたらしいメソッドが日々開発
されていることもわかりました。
(あまり考えたくないけれど)もし仮にに再発したとしても
6年前の初発の時とは随分と違ったケアを受けられると
確信いたしました!
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小渡章好 (木曜日, 12 7月 2018 17:29)
素晴らしい収穫、実り多いウィーンですね。